SNS疲れを防ぐ「デジタルファスティング」のすすめ ― つながりすぎた現代に、あえて距離を取る選択を
ピョートル・フェリクス・グジバチ
2025/04/22
「SNS疲れ」を防ぐために、意図的に距離を取る「デジタルファスティング(断食)」という習慣が、心の余白と健やかな集中を取り戻す手段として注目されています。
SNSを見たあとの“意味のない疲労感”
通勤中、昼休み、寝る前—— 「ちょっとだけSNSを見よう。」
そう思って、気づけば20分、30分とスクロールしてしまった経験はないだろうか?
見終わった後、なぜか心はざわつき、思考は散り散りに疲れている。 でも、「何を見たのか」は、あまり覚えていない。
これは、あなたが意志の弱い人だからではない。 SNSは、あなたの注意と感情を消耗させるように設計されているのだ。
SNSは、なぜ私たちを疲れさせるのか?
スタンフォード大学のアンナ・レンブケ医師は、SNSの利用は「小さなドーパミン報酬」の連続だと指摘する。 通知、いいね、コメント……これらは私たちの脳に「報酬」として刻まれ、依存を加速させる。
SNSはエンドレスに更新され、「完了」のない世界だ。 終わりがないことで、私たちは際限なく消耗し、脳は小さな刺激に追われ続ける。
イェール大学の研究でも、SNSで得た情報の多くは短期記憶にしか残らないことが示されている。つまり、私たちは「覚えてもいない情報」で、自分を疲れさせているのだ。
さらに、ハーバード大学の研究によると、SNSで自分に関する投稿をするとき、脳の報酬系が特に活性化することが確認されており、これが「自己開示欲求」を強化し、SNSから離れにくくなる要因の一つだとされている。
また、Meta社が提供した内部調査では、特にInstagramが10代女子の自己評価に悪影響を与えることが社内で把握されていたことも報告されており、SNSが心理的疲労を生む構造的課題は今なお世界的な議論の中心となっている。
「デジタルファスティング」という選択肢
現代では、食事の断食と同じように「デジタルファスティング(デジタル断食)」が注目されている。
これは、一時的にSNSやスマホとの距離を意図的に取る習慣のこと。 完全にやめる必要はない。大切なのは、「つながりっぱなし」から、一歩距離を置くことだ。
デジタルファスティングの3つの基本
✔️ 時間で断つ:SNSを使わない時間帯をつくる(例:寝る前30分、朝の1時間)
✔️ 日で断つ:週に一日だけ「SNSを開かない日」をつくる
✔️ 用途で断つ:仕事の連絡だけに限定し、プライベートのSNSを一時的にオフにする
今日からできる:シンプルなデジタルファスティング
あなたも、今日から簡単に始められる。
✔️ 寝る前30分、SNSを開かない。 スマホを別の部屋に置くだけで、驚くほど眠りの質が改善する。
✔️ 朝のSNS断ち。 起きてすぐの30分は、自分のために使う。ニュースやメールも見ない時間を意識的に確保する。
✔️ 週末だけ通知オフ。 金曜の夜から日曜の夜まで、SNSの通知を完全に切る。通知がなければ、自然とスマホを見る回数が減る。
まとめ:本当に大切なものは、離れてもつながっている
「毎日つながっていないと不安。」 そう思っていた私たちも、実際に距離を取ってみるとわかる。
✔️ 大切な人とのつながりは、通知がなくても消えない。 ✔️ 自分が本当に必要とする情報は、焦って追わなくても届く。
デジタルファスティングは、「切り離す」のではなく、「選び直す」ための習慣だ。
あなたは、どんな距離感でSNSと付き合っていますか? ぜひ、あなたの工夫を教えてください。
出典
Anna Lembke, M.D. (2021). Dopamine Nation. Stanford University.
Yale University (2021). Why the Internet Fatigues Your Brain.
Tamir, D. I., & Mitchell, J. P. (2012). Disclosing information about the self is intrinsically rewarding. Proceedings of the National Academy of Sciences.
The Wall Street Journal (2021). Facebook Knows Instagram Is Toxic for Teen Girls, Company Documents Show.